【ロマノフ家関連書籍】最安値:大エルミタージュ美術館展3/18~ 何故ロマノフ王朝は貴重な名画の数々を蒐集できたのか、その秘密をご紹介します!【エカチェリーナ大帝関連書籍】


こんにちは!コミコミです。いよいよ3月18日から六本木ヒルズ森アーツセンターにて、「大エルミタージュ美術館展」が始まりますね。
エルミタージュといえば、ロマノフ家が暮らした冬宮殿を思い浮かべた方もいらっしゃるのではないでしょうか。女帝エリザヴェータが宮廷建築家ラストレッリに命じた「ペテルブルクを壮麗なロシア・バロック様式の街並みに変貌させる建築事業」の一環として造られ、1762年に完成したのが冬宮殿です。1762年といえば、エリザヴェータ→ピョートル3世→エカチェリーナ2世と統治者が目まぐるしく変わった年でもありましたので、実際に冬宮殿を最初に使用したのはエカチェリーナ2世(彼女はエカチェリーナ大帝とも呼ばれます)との事です。
緑と白の石材を用いたロココ建築で、1,786のドアと1,945の窓を持ち、宮殿の北側はネヴァ川に面し、南側には宮殿広場が広がる世界有数の美しい宮殿です。

エルミタージュ美術館の起源は、エカチェリーナ2世が1775年に建てた自身専用の美術品展示室であるといえますが、当初は現在のように一般公開はされていませんでした。1863年に初代館長となったゲデオーノフによって市民でも観覧が可能となり、1917年のロシア革命(十月革命)を経た1918年、冬宮に存在した全ての研究・管理組織・冬宮殿とそれに付属する諸宮殿の群を「エルミタージュ美術館」として統合することになりました。現在、世界三大美術館と謳われ、所蔵品300万点を誇る「エルミタージュ美術館」はこのような過程を辿り、誕生しました。

それにしても、この夥しい名画の数々は、一体どのようにして極北の地サンクトペテルブルクに蒐集されたのでしょうか。今日はその不思議についてご紹介したいと思います。

◇ロマノフ家の始まり◇
300年以上ロシアで帝政を敷いたロマノフ家は、もともとはプロイセン出身の説もある地方の一豪族に過ぎませんでしたが、リューリク朝イヴァン4世・通称「イヴァン雷帝」とアナスタシア・ロマノヴナ(※)の結婚を機に、ロマノフ家は権力の中枢へぐっと近付きます。聡明なアナスタシアは癇癪持ちのイヴァンをうまく宥め、良好な夫婦かんけいを築きます。しかしアナスタシアが急逝。陰謀渦巻くロシア宮廷で、台頭してきたロマノフ家を快く思わない有力貴族たち暗躍があったことは想像に難くありません。イヴァン雷帝もそう考え、関わった疑いある貴族たちを問答無用で粛清していきます。きわめて残虐・苛烈な性格であったためロシア史上最大の暴君と言われる「雷帝」の誕生です。苛烈な粛清による統治を続け、いよいよ感情の制御が効かなくなったイヴァン雷帝は、後継者である自らの息子を殺してしまう惨劇を引き起こす等、後継者や政治体制に大きな問題を残しながらやがて亡くなります。

その後は、偽皇太子を自称するものがツァーリの冠位を継ぐ、はたまた3年間もの間ツァーリの座が空白となる等、ロシア国内も宮廷も混乱を来していました。
そのような混乱期、イヴァン雷帝の姻戚としてツァーリに推挙されたのがミハイル・ロマノフ。記録を見るに「なりたくて根回しをした」のではなく「暗殺を恐れて本気で嫌がっていた」ようではありますが、とにかくこれにて、後年ピョートル大帝やエリザヴェータ女帝、最後の皇帝ニコライ2世を輩出する、ロシア帝政の象徴「ロマノフ王朝」の始まりとなりました。

こちらがミハイル・ロマノフ帝。確かにあまり押しの強そうな雰囲気ではありませんね(笑)

※ロシアでは、女性の名字の語尾は変化させる事が多いです。「名字」の娘、という意味です。例えば、ガガーリンという名字の女性バージョンはガガーリナになります。

◇どのように蒐集が始まったのか◇
地方の一豪族から不安定な政権に登ったに過ぎなかったはずのロマノフ家に、なぜあのような高価な美術品と宝飾品の数々が蒐集されるに至ったのでしょうか。
ロマノフ家が初めてヨーロッパの美術品を手に入れたのは、ピョートル大帝のヨーロッパ派遣の際に持ち帰ったレンブラント数々だとされています。ピョートル大帝は1697年から1698年にかけて、「先進文化に触れる事」を目的の一つに掲げ、約250名の使節団を結成しヨーロッパに派遣。自身も変装して随行します。帰途、武器や手術用具、書物と併せて買い求めたのがレンブラントをはじめとする絵画類でした。その路線は孫の妃としてプロイセンから嫁ぎ、やがて血筋としては全くロシア人ではないながらも女帝となったエカチェリーナ2世(エカチェリーナ大帝)へと引き継がれます。エカチェリーナ大帝の統治時代に、ゴツゴウスキーなるドイツの画商が計225点もの絵画を売り出します。これらは本来、プロイセン・フリードリヒ大王のために集められた名コレクションでしたが、購入の為の資金繰りがつかなくなった大王が泣く泣く諦めたところに、財力にものを言わせたエカチェリーナ大帝が一括購入します。
未だ非文明国と見られがちだったロシアへ大量の名画が運ばれる事に、ヨーロッパ各地で抗議運動が行われるほど、当時はセンセーショナルな出来事だったようです。そんな運動もなんのその、その後もエカチェリーナは各地オークションに目を配り、絵画、彫刻、陶器、工芸品などを次々まとめ買いしていきます。新興国が芸術作品所有によって一流国肩を並べるには、この買い占め方式が手っ取り早く効果的なようです。後年、アメリカが印象派絵画の買い占めに走ったのも同じ思惑だったのかもしれませんね。

◇財源は・・・◇

「エカチェリーナ大帝肖像画」

「オルロフのダイヤモンド」と豪奢な王冠
エカチェリーナの王冠、宝珠の贅沢さも凄まじいものですが、特筆すべきはこの王笏。先の方に装着されているのは200カラット近い巨大ダイヤモンド、通称「オルロフのダイヤモンド」です。
それにしても、ピョートル大帝といいエカチェリーナ大帝といい、なぜこのように潤沢な財産を持つ事ができたのでしょうか。答えはシンプルで、農奴という名の奴隷労働力を国内に多数確保していたからです。ロマノフ家の繁栄は、悪名高い農奴制による、ロシア絶対主義に基づく搾取ありきの繁栄でした。
農奴制自体はピョートル大帝の父アレクセイ帝時代に始まりますが、ピョートル大帝時代に厳格化。人頭税、結婚税、死亡税を課せられるだけでなく、移動と結婚の自由を奪い土地に緊縛。どこかへ逃れる術もなくなります。時は流れ、エカチェリーナ大帝時代に農奴制は苛烈を極め、「貴族は天国、農民は地獄」の言葉通りの世界がロシアで展開されました。当時の新聞広告といった歴史資料からも窺い知れるように、「裁縫のできる28歳の娘売ります」「コックとして使える16歳の少年売ります」と大っぴらに人身売買する農奴市場が当たり前に存在する時代になっていました。
農奴の主人は、農奴を、家族と引き離してでも自由に売買する・抵当に入れる事ができましたが、農奴は主人に対して一切の不服の申し立てが禁じられていました。農奴は自身の所有権を完全に主人に握られながら、それに加えて、地代小作料や労役を主人に支払わなければなりませんでした。主人には、働けなくなった農奴や気に入らない農奴をシベリア送りにする権限すら与えられ、日常的な虐待も散見されました。ロシアは小麦の世界的な産地であったにもかかわらず、上等なものは西欧向けの輸出にまわされ、「国民の口に入ることはほとんどない」という状態。当時の新生児は5人のうち4人までが3歳までに死亡。貴族と農奴の懸隔が最も甚だしい時代でした。

農奴制度に支えられて贅の限りを尽くしたエカチェリーナ大帝ですが、そんな彼女も、戴冠直後は、本気で国政改革に挑もうとしたようです。帝政の絶対性の元ではあるものの、法の下の原則的国民平等を掲げたり、各階層からなる立法委員会を設けたり…。
エカチェリーナ在位時は啓蒙思想華やかなりし頃でもありましたから、エカチェリーナなりの「啓蒙活動」を試みましたが、生粋のロシア人ではない彼女の活動には貴族の後ろ盾が必須でした。その肝心に貴族たちは啓蒙など以ての外という姿勢を明らかにします。彼女の啓蒙は及ぶ範囲がごく限定されるようになり、自分に都合の良い「教え諭し」となってしまいます。
やがて、エカチェリーナは、領土を拡大し、ヨーロッパ先進国とも渡り合えるようになり、かつかくたる栄光と唸るような財産を手にします。その在位後半には、彼女は「啓蒙と自由は国を弱体化させる」の信念のもとに行動し、「ロシアのような広大な国を束ねるには強権的君主制が最適だ」と断言するに至ります。
エカチェリーナ大帝の主張と行動の移ろいはひたすら残念でなりませんが、彼女がロシア絶対主義を強化しなければ今日のエルミタージュ美術館は成立しなかったのですから皮肉なものです。

ロシアの明暗どちらの歴史も窺える「大エルミタージュ美術館展」3月18日から六本木ヒルズ森アーツセンターにて開催です。ロマノフ家の人々や当時のロシア様子を窺える書籍や漫画も併せてどうぞ!

エカチェリーナ大帝 ある女の肖像 上/原タイトル:CATHERINE THE GREAT/ロバート・K.マッシー/北代美和子

エカチェリーナ大帝 ある女の肖像 下/原タイトル:CATHERINE THE GREAT/ロバート・K.マッシー/著 北代美和子

ペテルブルクの薔薇 ロマノフの血を継ぐ女帝エリザヴェータ/河島みどり

名画で読み解くロマノフ家12の物語/中野京子

最新 ロマノフ王朝の至宝 華麗なるロシア / 南川三治郎

興亡の世界史 ロシア・ロマノフ王朝の大地 講談社学術文庫 / 土肥恒之

女帝エカテリーナ (1) (中公文庫―コミック版) 池田理代子

女帝エカテリーナ (2) (中公文庫―コミック版) 池田理代子

女帝エカテリーナ (3) (中公文庫―コミック版) 池田理代子

 

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